東京都で花粉の飛散が確認されたとの事です。
今回はA:花粉飛散予報 B:花粉症対策 C:花粉が原因のアレルギー性結膜炎と思っていたら、実は? の3項目について記載したいと思います。
A:花粉飛散予報
NPO花粉情報協会の予測によりますと「2017年のスギ花粉の飛散量は過去10年平均値や2016年との比較では下回る地域がほとんどだが、飛散量は北関東では約6,000~9,000個/cm2、南関東では約4,000個/cm2と多く、大量飛散となる見込み」との予測です。
B:花粉症対策
毎年、この季節に花粉症の症状「眼のかゆみ・くしゃみ・鼻やノドの症状」の出る方は、症状が出る前にアレルギーの原因物質(アレルゲン)との接触を避ける事、いわゆる「原因(抗原)回避」等のセルフケアが大事と考えます。
また花粉飛散時期の情報を参考に、飛散が多いと予想される数日前から抗アレルギー剤(内服・点眼薬)を服用・点眼する事などが必要と考えます。
▼対策Ⅰ:主な原因物質の回避
- 晴れた日の外出は避ける
- マスクやメガネの着用
- 原因物質を家の中に入れない(家に入る前に衣類をはたく)
- 帰宅後の着替え、手洗い、うがい 等です。
▼対策Ⅱ:生活習慣にも心配りを!
昨今、疲労やストレス・眼の使い過ぎによるドライアイ(涙液の不安定化)が、涙によるバリア機能を低下させることから花粉症(アレルギー性結膜炎)を併発するケースが多いと言われています。
「眼が乾く」「眼が熱い」「しょぼしょぼする」等のドライアイの自覚症状を持つ患者様には『涙のケア』が花粉症(アレルギ性結膜炎)予防の一環になると思います。
涙液の量や質を整える事により、眼のバリア機能が高まり、花粉の侵入を防ぎアレルギー性結膜炎発症の予防になると言われています。 『涙のバリア機能を高めること』は、花粉症対策の一環としても加えても良いのではないかと考えられております。
※涙の量や質を高めるためには※
- 充分な睡眠をとり、ストレスや疲労を避ける(自律神経のバランスが崩れた結果、目の乾燥が生じます)
- パソコンやスマートホンの見過ぎを避ける(実際に瞬きが減る事によって眼が乾燥する)
- 普段から眼の乾燥感がある方は目薬を使用する(点眼薬の選択は眼科専門医に相談しましょう)
●人工涙液点眼薬 ●ムチン※という粘液の分泌促進作用の点眼薬
●ヒアルロン酸点眼薬(即効性だが対症療法的)
※ムチン =涙を目にしっかりとくっつかせるネバネバした粘液 - 食生活でムチンを多く含んだ納豆、山芋等を摂取する。ムチンは眼だけではなく、鼻・胃・腸の粘膜修復の作用もあります。
【参考】 涙は3層構造になっています(下図)
ムチン層(ネバネバした粘液)、涙液層(涙の90%を占める水の層)油層(涙の蒸発を防ぐ油膜)の3層です。
C:花粉が原因のアレルギー性結膜炎と思っていたら、実は?
「眼が充血して痒い」「擦ったら腫れた」との症状で、花粉飛散時期には眼科を受診される方が多くなると思います。 大概は花粉が原因のアレルギー性結膜炎ですが、中には注意すべき感染性結膜炎である事があります。
アレルギーで充血した患者様が多いこの時期に、感染性結膜炎と区別する事は、眼科医にとっても難しい問題です。まさに「眼科医泣かせの時期」となります。
その為、問診がとても大切になります。眼が赤い、痒い以外に「症状はいつ頃からですか?」「痛みを伴いますか?」「飲み込む時にノドは痛くないですか?」「周囲に発熱している人はいませんか?」「症状に左右差はありますか?」「白目がブヨブヨになって、どの位の時間がたちますか?」等の問診が大切になります。
この時期は眼が痒い事により、眼を触る事が普段より多くなるため、細菌やウイルス感染も多くなります。私の経験では、アレルギー性結膜炎と感染性結膜炎を区別する為に注意すべき症状や所見は下記の通りになります。
(1)症状に左右差がある (2)痛みを伴う (3)飲み込むと喉が痛い (4)片眼のまぶたや、白眼のブヨブヨ(クインケ浮腫)が数時間以上続く (5)下のまぶたを見るとブツブツがあり、むくんでいる (6)耳の前のリンパ節腫脹・圧痛 【 ※(4)(5)(6)は下記イラスト及び説明文参照 】 |
【(4)クインケ浮腫 】
※(4):片眼のまぶたがボッテリと腫れ上がったり、白目がゼリー状にブヨブヨに腫れるのはアレルギー性結膜炎で眼を強く擦ったりした場合に突然、おこる事もあり、驚いて眼科受診される方も少なくありません。「クインケ浮腫」と呼ばれ、通常は数時間で、黙っていても元に戻ります。 この状態が半日以上片眼に続く場合も感染性結膜炎を念頭において診察する必要があります。
【 (5)リンパ濾胞 (ろほう) 】
少々、濾胞を誇張したイラストになってしまいました
※(5):下まぶたのブツブツは「下眼瞼 リンパ濾胞 (ろほう)」という感染性結膜炎によくみられる所見です。普段は平坦にツルッとした下眼瞼に、濾胞が急に現れた場合は要注意です。
アレルギー性結膜炎でも類似の所見はみられますが、下まぶたにブツブツは少ないのが特徴だと思います。普段からご自身で、下まぶたを引っ張り(あっかんべぇ~)して確認しておくことも大事だと考えます。下まぶたに濾胞を伴う疾患は種々ありますので、専門医に相談が必要であると思います。
【 (6)耳前リンパ節の腫脹・圧痛 】 ウイルス性結膜炎の典型例に認められます。
実際に「花粉症で眼が赤く、痒い」と受診された患者様の中で、上述の詳細な問診と診察にて「咽頭結膜熱(プール熱)」「流行性角結膜炎」であった患者様も少なくありません。特に咽頭結膜熱は発熱が伴うとは限らない場合もあります。症状が出て間もない際の初期診断は更に難しいのが現状です。
上記の症状があれば眼を触らない様にし、家族や同僚とタオルを別にしたりした上での眼科受診をお奨めいたします。
最後に、自分も50歳を超えてから遅咲きの花粉症になりました。止まらないクシャミ、眼の痒みなどは辛いものです。あなどれませんね、花粉症は・・・。
少しでも楽になれる様にご一緒に花粉症対策を致しましょう。