4月になり、いよいよ新学期も目前です!。 今月から学校検診も始まります。
自宅でお子様(小学生低学年でも)が読書や宿題をしている時に、頭痛を訴えたり、大人の方によく見かける「肩や首がこった時」にする様な仕草で首を回したり、辛そうに目頭を抑えたりしている姿を見かけませんか?。
現代の子供達は、親世代以上に学校・塾・ご家庭での勉強量がかなり多くなってきている様です。その上、パソコン・種々のゲーム機器・携帯電話の普及等々、全てにおいて目を使う事が多くなっていると思います。
「これだけ勉強していれば」又は「これだけゲームで遊んでいれば」目が疲れたり、頭が痛くなるのも当然だろうとお考えのご家族の方々が多いと思います。 私が中学時代に「肩がこった」等と口にするものなら父親に「中学生が生意気な事を言うな」と一喝されたものです。しかし、私の肩こりにも、今思えば原因があったのです。その件に関しては後述致します。
外来に「子供が最近、黒板が見えないと言っている」または「学校検診で視力低下を指摘された」との事で来院される子供たちがいます。視力低下の原因は近視・乱視・仮性近視等が殆どですが、通常は3歳児検診や就学時検診で見つかるはずの「弱視※」が初めて見つかる場合もありますので注意が必要です。当院では小さいお子様の視力検査の場合には、必ず片目ずつガーゼで隠した上で矯正視力検査を施行しております。何故なら顔が小さいお子様の視力検査の際に、一般的な視力検査用の眼鏡枠を使用し、遮蔽板と呼ばれるモノで片目を隠していても、枠や遮蔽板の隙間から検査していない方の目で視力表がのぞけて見えてしまっている場合があるからです。そうした事によって片目の視力が育っていない、いわゆる「弱視」が、それまでの「検診」や「眼科での視力検査」においても異常を指摘されずに小学校低学年まで発見されない例も少なくはありません。
肩こりの話に戻りますが、子供でも眼の使い過ぎで本当に辛い肩こりや頭痛を引き起こす事があります。原因としては主に下記の様な状態が考えられます。
1) 遠視・乱視
2) 斜視(外斜視・内斜視)→ 見た目には判らない程度の目の位置のズレ。
両眼視機能※が衰えている事もある。
3) 斜位(外斜位・内斜位)→ 目の位置が時にズレる。たまに二重に見える事がある。
両眼視機能には問題は無いが、疲労の原因になる。
※弱視の定義・原因や、両眼視機能等に関しましては、ご面倒でも「弱視」「両眼視機能」で検索して頂ければと考えます。私が解説すると長~くなってしまいますので(^_^;)。
「遠視」とは簡単に表現しますと、遠くにも近くにもピントが合っていない状態の事をいうのですが、若年者の場合は調節力(目の中にある筋肉を使って、ピントをあわせようとする力)を使って様々な距離にピントを合わせる事が出来ます。従って視力検査では良い視力が得られることが多いようです。しかし教科書やゲーム機器等を近くで長時間見ていると調節力を過度に使ってしまいますが、若年者の調節力は強いので頑張れば何気なくどこにでもピントを合わせ続ける事が出来てしまいます。
特に近くを見るために頑張ってしまう状態を「調節緊張」と呼びます。逆に調節力が衰える事を調節衰弱=老視・老眼と呼びます。
然しながら、いくら若いからといっても遠視の場合に長い時間に渡って近くにピントを合わせ続けている事で「調節力」の使い過ぎによって、目の中の筋肉疲労を引き起こしてしまいます。その結果が「肩こり」や「頭痛」「眼精疲労」となる訳です。
遠視のお子様は学校検診等の一般的な視力検査では「視力低下のお知らせ」は貰わない事が多い様です。
学校検診で視力低下の知らせが無くても、読書・勉強などで目を使っている際に首や肩がこった様な仕草をしたり、頭痛を訴えたり、眼の周りをマッサージしている様な事があれば、遠視が原因であったりすることが多い為、眼科受診をお奨めいたします。眼科受診により遠視や乱視、また短時間の学校検診では発見し難い軽度の「斜視」や「斜位」が隠れていないか等も、直接お聞きした症状を参考に、更に詳細な眼科的検査による各種症状の原因追究ができると考えます。
また、斜視だったら「見ればわかるだろう」とお考えの方もおられるかと思いますが、見た目では殆ど判らない微小角斜視や間歇性外斜視(=かんけつせいがいしゃし:温泉の間歇泉の様に、出たりでなかったりする斜視)や、眼の位置がずれっぱなしではない斜位という疾患もあります。特に近くを見た時にだけ眼の位置が外れる外斜位(輻輳不全型外斜位=眼を内側に寄せる機能が弱い、いわゆる「寄り目」が充分に出来ない状態)という疾患もあり、斜位も又、頭痛や眼精疲労の充分な原因になりますので斜視・弱視をしっかりと修行した眼科専門医や視能訓練士による診察や詳細な斜視検査等が必要になると考えます。
斜視や斜位による辛い頭痛や眼精疲労を引き起こしていると考えられる場合には、外れる(又は寄る)角度にもよりますが、プリズム眼鏡というものを使用し目の位置のズレを補正・補助する事によって症状の消失をみる事に繋がります。思い当たる方は受診時に御相談下さい。
(注)今回は述べさせて頂いた「頭痛」「眼精疲労」は「眼疾患と症状:第4回」の内容において「眼の機能的障害」に当てはまる一部の疾患に関しての解説となります。子供の頭痛や眼精疲労の場合にも機能的ではない重大疾患が隠れていないかの鑑別も重要です。
最後になりますが、私の肩こりの原因は「軽度の輻輳不全型外斜位」と「姿勢の悪さ」でした。寄り目をする力が弱い状態で姿勢を悪くし、近くで読書などをしていると「斜位の無い人」に比べ近視になりやすく、更に肩こりなどが出やすいのです。
今でこそ外来で「暗い所で本を読まない」「近くで長時間本を読まない」「寝転がって本を読まない」等、近視化予防対策を半ば偉そうに口にしていますが、それを実践してしまったばかりに、子供の頃から近視が強くなり、姿勢が悪いが為に「肩こり」にも悩まされていました。
皆さんは本当に気を付けましょう。それでは暫くの間、学校検診に行って参ります!。