前回、学校医を担当させて頂いている学校の保健委員会にて「小中学生のコンタクトレンズの使用について」の質問を頂きましたので回答を掲載いたしました。
他の小中学校からも何点か眼に関する質問がありました。今回は主に「視力低下」や「読書時の姿勢に関して」、また季節的に「花粉症に関しての対症療法」などの質問を頂きましたので回答させて頂きました。少しでも皆様のお役に立つことが出来ればと考え、今回も掲載させて頂きます。
御質問1】
中学2年生「中学に入学し急激に視力が低下しました。視力回復に繋がる食品・体操等があれば教えて下さい。」
【回答】
Ⅰ:食品・食事に関して:視力回復に繋がる食品はビタミンA・C・E・B 群(B1、B12)や青魚(EPA・DHA)といわれておりますが、現代では充分な栄養は摂れると環境だと思われます。問題は、時間的な事や精神的な事だと考えます。現代では習い事が多かったりすることにより生活が不規則になりがちです。
実際には難しいとは思いますが、栄養的にバランスの取れた食事を定時に1 日3 食摂る事が重要だと思います。
ダイエット等は成長期には(内科的に食事療法を指摘されていない限り)極力避けた方が良いと考えます。
Ⅱ:眼のストレッチの方法に関しては / 参天製薬(下記:URL)を参照ください。
https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/eyecare/stretch/
御質問2】中学2年生「小学校高学年から花粉症と診断されました。薬を飲むと眠くなるので、出来るだけ薬をのまずに対処したいと思っています。効果的な対処法や、粘膜を強くする食べ物などがあれば教えて下さい」
【回答】
Ⅰ:クスリを使用しない対症療法としては「とにかく原因物質の暴露を避ける」事です。原因物質が花粉と限定されているのであれば、花粉情報に留意し、少しでも飛散が始まる可能性があればマスクを着用し、帰宅時に玄関先にて衣服を払う(上着を部屋に持ち込まない)、洗顔、鼻をかむ、洗髪を励行すること等が重要になります。
ご家族の協力も必須になります。
眼の周りが荒れ易い場合には、髪の毛に付着している花粉が原因になりえるので、花粉症の時期には前髪を上げる事等も対症療法になります。
また枕カバーに付着している花粉が原因になる事が多いと言われていますので、枕カバーの洗濯は大事になります。
布団に付着している花粉を取り除くために掃除機を使用して、花粉を吸い取る様に行って下さい。
【回答】
Ⅱ:食事に関してですが、発酵食品が良いと言われています。具体的には味噌、麹、ヨーグルト、漬物、納豆、チョコレートなどです。またビタミン類(青汁など)、DHA・EPA(青魚など)、αリノレン酸(油など)も予防食材として挙げられています。
食事に関しては前述のバランスの良い食事を規則正しく摂取する事も重要になると思います。
栄養の吸収を良くするために胃腸を丈夫にする事も大事と考えます。
どうしても、対症療法を心がけても症状が強くなる場合には、花粉をブロックする薬剤の早期投与が必要と考えます。発症してからでは遅い事もあります。眠くなり難い花粉症薬もありますので、かかりつけ医と相談する事をお奨め致します。
御質問3】小学1年生「前から姿勢の悪さを注意していても、机で長時間読書をすると猫背になって来る」
【回答】
机に向かっている際に猫背になる(モノを近くで観ている)原因として「近視」になっている可能性があります。以前と比べ(片眼ずつ隠して見て)視力が悪くなっていないかをお子様に聞いてみて下さい。
部屋全体の照度が暗い事が原因で、本などが見え難くなり猫背になっている可能性もあります。
また机上の教科書やノートを照らす照明器具の照度が低い中で勉強する事により一時的に近視化して、前かがみに本などを近くで観ようとしている可能性もあります。
部屋や机上の照度も確認してみましょう。
この様な姿勢の悪さが続くと、本当の意味で「近視の進行」を起こしてしまいます。
また近い距離でスマホなどを長時間観る事も近視化の原因になります。
適切な距離(読書は33Cm、パソコン類などを見る際には50Cm は離れて)で観る様にしましょう。
姿勢に関与する原因として、机・椅子の高さや角度が適切か否かも考える必要があります。場合によっては椅子の補助器具なども必要にあると考えます。
※「姿勢が悪い」という事の原因として、眼科的な事だけが原因では無く、整形外科的疾患(腰椎、頸椎、側弯症など)の可能性もあります。こちらに関しても注意が必要です。
視力低下の自覚があれば学校健診を待たずに、早期の眼科受診をお奨め致します。
御質問4】小学2年生「夜、部屋を暗くすると眠れないと部屋の電気を付けたまま寝ます。
夜中に何度もトイレとか、喉が渇いたと言って何度も起きます。睡眠が充分に眠れていないか心配です。
部屋を明るくしたり、何度か起きてしまう場合に成長ホルモンの分泌などに影響はあるのでしょうか?
また、どの様にしたら深い睡眠がとれるのでしょうか?
【回答】
実際は難しいと思われますが、眼科的な対処として必要と思われる事を記載致します。
寝る前の準備として
Ⅰ:就眠3時間前からは部屋の照度を徐々に下げていく事。テレビ・パソコン・スマホ等は観ない様にする。
Ⅱ:就眠前には寝室の天井の直接的な照明の使用は避け、床やベッドの下に小さな照明(電気式キャンドルなど)を置く事により、お子様の目に直接、照明が入らない事により光による興奮を抑え、また暗いという不安感も軽減され深い眠りが得られるとも言われています。
成長ホルモンは深い眠りに入ってからの3時間に集中して分泌量が多い傾向にあると言われていますので、安眠が出来るような声掛けや環境作りが必要と思われます。
「早く寝なさい!」等の、お子様を精神的に刺激するような言葉は避ける様な配慮も重要と考えます。また睡眠前は適度な水分の摂取に留め、刺激性のある飲み物や、水分の過剰摂取は控えた方が良いかと考えます。入眠後の排尿の抑制になると思います。
また口渇・多飲・多尿は病気による症状である場合もあります。
若年性糖尿病の初期症状である可能性もあります。また尿崩症などの場合も症状を訴えます。
多飲、多尿が続く際には小児科受診をお奨めいたします。
御質問5】中学2年女子「気候の変化(気圧の変化、雨の降る前など)によってなのか、めまい・ふらつき・頭痛・吐き気などが出る事があります。対処法を教えて下さい。
【回答】
まず、早急に器質的疾患の有無を調べる必要があると思います。
内科的疾患(貧血の有無、低血圧、胃潰瘍など)、頭蓋内疾患(小脳疾患、脳幹部疾患等)、耳鼻科的疾患(良性発作性頭位性めまい、メニエール病など)等に関してかかりつけ医の先生と相談が必要と思います。
器質的疾患が無ければ精神的な事が原因になる事も考えられますが、まずは病気が隠れていないを調べる事が必要になると考えます。
※特に朝の頭痛・吐き気は要注意です! 緊急性がある場合があります※
最後に、専門外ですが、下記の様な質問もありました。自身の経験談で回答してみました。
御質問6】小学4年生「ヘッドフォンをしながら高音で友人と通信しながらゲームなどをしています。難聴が心配です。親が難聴に早く気が付けるためのアドバイスをお願いします。
【回答】
専門外ですが、一言だけ意見を述べさせて頂きます。
長時間・長期間ヘッドフォン等で高音を聞いている事により、内耳神経が徐々に障害され、将来的に「音響外傷」と言われる取り返しのつかない難聴になる可能性が高くなります。
極力、高音でのヘッドフォンは避け、コンサート等の大音響のする場所に行かれる際もお子様には耳栓をする事をお薦めいたします。
お子様に難聴が無いか否かの確認は、片耳が聞こえていれば、もう一方の耳の難聴の発見は難しいと思います。
まずは「耳鳴りがしないか否か」を聞く事は重要だと思います。
また片耳をふさいで電話の受話器を片耳ずつ耳に押し付ける様にして音を聞いてみて、聞こえ方に左右差が無いかを確認する事も一つの方法ではないでしょうか。自分はそれを実践しています。
音響外傷は神経の損傷です!
治療にはステロイドの内服や点滴が必要になる場合もあります。
治療効果は30 歳を超えると急激に下がる傾向にあり、回復しない場合もあります。
怖い音響外傷にならない為にも、子供の頃より大きな音を長時間聞かない様に注意しましょう。
皆様が健康で新年度を迎えられるようにスタッフ一同、祈っております。
平成31年3月14日 みなみ野眼科クリニック