5月は学校で行われる視力検査後の「視力低下」の結果用紙を持参されクリニックを受診される患者様が最も多い1カ月でした。
6月に入り学校検診の二次検診も一段落の傾向にあります。
近年、毎年の傾向ですが「近視の低年齢化」は否めません。
仮性近視(調節けいれん)の場合はある程度の視力回復は点眼治療により期待が出来ます。然しながら真性近視の場合は点眼による治療法は基本的にはありません。
近視の低年齢化の現因や、近視の進行予防に関しては当ホームページの「子供の視力を守るには?目に優しい生活とは?http://www.minamino-eye.com/column/1169」をご参考にして頂ければ幸いです。
学校検診で視力低下のお知らせを貰ってきても、矯正視力(近視・遠視・乱視のレンズを入れた視力)が1.2以上あれば基本的に「病的視力低下ではない」のですが、中には矯正視力が充分に得られない「眼の病気」の場合もあります。
未就学時や小学校低学年で発見される病的視力低下の多くは「弱視」です。
弱視の原因には屈折性弱視、斜視弱視、視覚遮断性弱視などがあります。
この様な場合には医学的に「治療用の眼鏡装用」「斜視手術」等が必要になります。他に病的視力低下の原因には低頻度ではありますが先天性白内障や、種々の眼底疾患も認められる事もあります。
近年、徐々に増える傾向にあるのは「心因性視神経症」です。
近視や遠視・乱視も無く、眼底やその他にも異常所見が無いにもかかわらず「視力が出ない」「見えない」という、種々のストレスが原因である疾患です。
軽症では矯正視力が0.7前後である場合もありますが、重症になると矯正視力が0.03しか得られない場合もあります。当然、脳内の病変も疑いますが、視野検査(ゴールドマン視野検査=動的量的視野)で確定診断がつく事が多い疾患です。「らせん状視野」「求心性視野狭窄」等の特異的な視野検査結果がみられます。
※ゴールドマン視野計による【らせん状視野】※
今年は特に心因性視神経症の患者様が多い様な印象があります。当院のHPをご覧になられ御来院される方が増えているのでしょうか。
小中学生だけではなく大学生や大人の心因性視神経症の患者様も少なくありません。年々、ストレスが増えているのでしょうか。
春は進級・進学・環境の変化(初めての一人暮らし、仕事の配置転換)等が多い季節です。過剰なストレスが原因と言われています。この疾患に関しての詳細は当ホームページ「眼疾患と症状:第7回 視力低下:ストレス性(小児=思春期編)http://www.minamino-eye.com/column/421」に掲載していますのでご参照ください。
この数年若年者の緑内障の方も増加傾向にあります。
何気なく「メガネやコンタクトレンズを作りたい」という目的で受診される17歳~25歳位の若い方の緑内障患者様は決して少なくはありません。
数年前に、初診時には自覚症状も無く、既に上半分の視野が欠損していた進行性の緑内障であった20代前半の患者様もいましたが、発見時より点眼による加療で幸い視野の進行は認めておりません。
「緑内障は40歳以降の病気」と認識されている方々が多いと思いますが、「若年者にも緑内障の方はいる」という事を知って頂ければ幸いです。
また、その中の多くの方には「緑内障の家族歴が多い」傾向にあります。
ご自身が既に緑内障と診断されている方の、お子様・お孫さんが眼科を受診される場合には「自分の○○が緑内障なので、自分に緑内障の可能性が無いか診てもらう様に言われた」と一言、受診先でお伝え頂ければ早期発見に繋がるかもしれません。
皆様が「大したことの無い病気」と認識されている「結膜下出血」や「急性霰粒腫(モノモライ)」等、他の疾患で御来院となった患者で、偶然、緑内障が見つかったケースも少なくは無いと思います。
眼科医としては、投薬の関係もあり、急性感染症以外の方であれば、緑内障の有無だけは初診時に確認しています。
最近は、メディアの影響で眼の健診目的で御来院される方が増えている様です。
緑内障や糖尿病性網膜症等は、なんの自覚症状も無く進行してしまう病気です。現に進行性緑内障の患者様で、片眼の半分が見えていなくても自覚症状の無い方もおられます。
診療後に「緑内障の可能性が高いです」と患者様にお伝えしても「だって、俺、視野欠けてないよ」と言う方も少なくありません。視野が欠けるという自覚症状があれば相当進行した緑内障であるとお考え下さい。
また「自分は毎年、健診を受けていて眼圧が高いと言われた事は無い」と言われる方も緑内障である場合があります。
眼圧には血圧同様に変動があります。高血圧の方が内科を受診した際に、たまたま「血圧は正常です」と言われても高血圧症である場合がある事と同様です。
厄介な事に、最近の日本人の緑内障の多くは「正常眼圧緑内障」というタイプの緑内障で、眼圧検査だけでは診断できません。緑内障の疑いは眼底検査において「視神経の深い陥凹が認められる」事から始まります。
年に一回の眼圧検査より、年に一回の眼底検査(眼底写真)のある人間ドックが有効と思われます。
緑内障早期発見の為にも近隣眼科で「眼の病気が無いか診てくれ」と受診されるのは如何でしょうか。
正常眼圧緑内障のリスクの一つに「中等度~強度の近視」が挙げられています。上述しました近視化の低年齢化が将来「正常眼圧緑内障のリスク」にならない様に近視が進行しない様に注意しましょう。
強度の近視が原因と言われている疾患は正常眼圧緑内障の他に、網膜剥離・黄斑変性症等があります。
強度の近視は種々の病気の根源になりかねませんので、少しでも近視が進まない様に眼科専門医の意見を聞いてみる事をお薦めいたします。
平成29年6月22日 みなみ野眼科クリニック