再びプール熱警報(この時期に?)!!

この時期になり、再びプール熱(咽頭結膜熱)の患者様が「みなみ野エリア」で増加傾向にあります。

今年のインフルエンザの流行は未だですが、地域では「感染性胃腸炎」「プール熱」の方が多い傾向にあります。対象疾患ごとの発生状況も、この数週、警報レベルを超えております(下記URL参照)

※対象疾患ごとの発生状況※

http://www.city.hachioji.tokyo.jp/hoken_iryo/hachi_hokenjyo/9757/032318.html

「この時期にまさか」と思われる方も多いと思いますが、プール熱は決して夏限定の病気ではありません。

新型インフルエンザが日本で流行した年は、国内で「うがい・手洗い」を徹底した為に、プール熱もかなり減少致しました。この疾患は重症化すると肺炎などを併発し入院になる事もあり、ある意味、インフルエンザより性質が悪くしつこい病気です。大人の家庭内発症も多くみられるのが今年の傾向です。

インフルエンザとは違って予防ワクチンも無く、特効薬もありません。予防は手洗いとうがいです。

流行を防ぐ為には感染者の方のご協力が不可欠です。感染された方は、症状が治ってからも2日間は可能な限り外出を控えて頂ければ幸いです。感染経路は接触感染(メヤニ)・飛沫感染(咳やクシャミ)です。

公共の乗り物(バス・電車)をご利用の際はお出かけ前に、充分な手洗いの上、マスクの装着をお願い申し上げます。

プール熱に関する更なる詳細は当HPの★プール熱警報!!★をご覧ください。

コチラをクリック:http://www.minamino-eye.com/column/598

 

ご自身やご家族が「プール熱かな?」と思いました際には、院内感染防止の為、かかりつけ医に電話にて御一報の上での御受診をお願い申し上げます。

2013年12月6日

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最新型OCTバージョンアップ!(その2)

今回のOCTバージョンアップ機能は前回、説明させて頂きました「撮影幅の増加」の他にも、多々ありますが、患者様にとりまして最も有意な点は「経過観察機能の強化」となると思います。
今回のバージョンアップにより、従来は出来なかった長期経過観察結果の比較が可能になり、なんと、最大50回の撮影結果の比較が可能になりました!

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  【図0:新経過観察機能イメージ像(黄斑マップ)】

更に従来からの経過観察機能も一新され、初めての(1回目)の撮影画像(=ベース画像)と2回目以降の撮影画像との比較 / 差分が明確に表示できるようになりましたので、今まで以上に患者様にも治療後の経過を判り易く提示の上、説明できるようになりました。勿論、50回全て掲載可能な訳ではありません。最大を50回とし、その中から主治医として適切と思われます時期の解析結果や、患者様がご希望された検査時期をチョイスした結果の推移が1枚の用紙に印刷可能です。

下記に新しい経過観察機能の例を掲載いたします。緑内障(※1)と網膜疾患(※2)の2例となります。従来の解析結果(図)に加え、新しく設定された下段の折れ線グラフにより各疾患において判定に必要な網膜の層別厚みの推移を提示する事も可能となりました!

(※1)緑内障とは眼圧が高い事等によって網膜を構成する10層構造の中の「神経線維層付近」が選択的に薄くなっていく疾患です。薄くなった上、ダメージが強くなれば視野が欠けます。
緑内障では「網膜の神経線維層付近が薄くなる=悪化している」という事になります
【網膜は全層を合わせても厚さ0.2~0.3mmにすぎない薄い膜です。OCTは、その網膜の10層構造の一部の厚みさえも選択的に計測できる精密機械なのです!】
治療によって「神経線維層付近の厚みがどう変化しているか」、また「眼圧は落ち着いているが、今の治療で本当に充分な治療となっているか」等も視野欠損が進行する前に充分な検討が出来ます!
NIDEK社様にご提供頂きました緑内障の新しい経過観察結果の表示例を示します。

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【図1:緑内障例の網膜神経線維層付近の厚みの推移(NIDEK社提供)】

図1解説:向かって左上が一回目の解析結果。右方向に向かい1年9ヶ月後、2年2か月後・・・と継続的に撮影された解析結果となります。下側に放射線状に青く示された部位が、前回測定結果と比較し、神経線維層付近の厚みが薄くなり悪化している部分になります。

同図の下に提示されている折れ線グラフで「ピンク色の線」は上方の神経線維層付近の厚みの経過(変化なし)、「青い線」は下方の神経線維層付近厚みの経過を示しています。

下方の神経線維層付近の厚みが薄くなっていく傾向にある事がグラフでも示されています。

(※2)網膜疾患には網膜の中心部である黄斑部(おうはんぶ)が変形したり、むくむ(浮腫)事によって黄斑部の厚みが増す病気があります。症状は「視力低下」「歪んで見える」「左右で明るさが違って見える」「左右の眼でモノを見比べると、大きさが違って見える」等の症状です。
糖尿病性網膜症(黄斑症)・黄斑変性症・中心性網膜炎 等による黄斑浮腫や黄斑出血、他に黄斑前膜症等が代表的な病気です。
これらの疾患においては「網膜全層が厚くなる=悪化している」という事になります。
この場合は網膜全体(網膜10層)の厚みを測定した結果の経過を観て治療効果を比較します。
1例の方の経過表を下記に表示いたします。治療によって病的に厚くなってしまった網膜全層部分(乳白色で示された部分)が薄くなっていく傾向にあります。病気が改善し、病的に増してしまった網膜の厚みが減少し、その範囲も縮小していく経過が明らかです。

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【図2:黄斑前膜術後の撮影結果の経過表(当院患者様にご了承を得た上の掲載です)】

図2解説:当院の黄斑前膜の患者様の治療後の経過です。向かって左上が一回目の解析結果。緑色の部位が正常網膜の厚みで、乳白色の部分が病的に厚くなってしまった病変部を表します。1回目は術後、当院再診時の解析結果です。右に向かって、その2か月後、8か月後の解析結果です。乳白色で示された病的部分の範囲が狭くなっており、また下の折れ線グラフでは、病変部の厚みが黄斑部の上下共に薄くなって(=正常化して下降傾向になって)いく経過が一目瞭然です。

今回掲載させて頂きました他にも、種々の撮影方法での長期経過観察も可能となっています。
患者様の疾患・病態・障害部位に合わせて、どの様な解析結果で経過を追う事がベストであるかを見極めるのも医療従事者としての役目と思っております。

また、今回のバージョンアップは、医療従事者側にとりましても有意な機能向上となりました。
1) 画像の強調化(エンハンスイメージ機能の追加)等の撮影機能の強化
従来のバージョンで撮影した画像(既存の画像)にも対応する、更に綺麗な結果の得られる画像処理システム
2)機器の使いやすさの向上
3)データ管理の簡素化
4) 万一の事態に備えたデータのバックアップに対する自動リトライ機能追加

等になります。これ以上は、かなりマニアックになりますので敢えて詳記は避けますが、この素晴らしい機器を、より多くの患者様の治療に活かせるよう、常に最新情報を取り入れ、医師をはじめスタッフ一同準備しております。詳細は受診時にお気軽に医師・スタッフにお尋ねください。

今年も残りわずかですが、今後は秋田で開催の日本神経眼科学会に参加予定、また11月末には恩師のご自宅にて神経眼科の勉強会も開催されます。
これからが厳しい寒さ本番の季節となりますが、皆様のご健康を心より祈っております。ご自愛くださいませ。

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最近の話題:チャーリー太田選手検診・就学時検診・学会、etc.

先日、八王子中屋ジム所属の東洋太平洋スーパーウェルター級王者、チャーリー太田選手がニューヨークで開催される国際戦前の検診に来院されました。視力、眼圧、眼底、眼球運動などなど、全てに眼科的な問題はなく試合可能の診断書(英語・・・汗)を記載いたしました! 流石にプロ!検診結果が出るまでの顔つきと、検診結果に問題が無い事を告げた後のチャーリー選手の顔つきがまるで違いました。「問題なし」と告げた後の嬉しそうな表情を観て下さい。

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写真左:検診後のチャーリー選手/写真右:試合前のチャーリー選手

しかし、八王子中屋ジムは先日世界戦を戦った荒川仁人選手をはじめ、有望な選手が多いですね! 検診する側も緊張度が増します。チャーリー選手の勝利をみなみ野眼科一同祈っております。 試合詳細はコチラ:http://8box.blog.shinobi.jp/Entry/1897/

私事になりますが、本日から横浜で開催されます日本臨床眼科学会に朝1番より参加してきました。
午後からは市内の小学校の就学時検診があり、初日は全日の参加は出来ませんでしたが、今後も患者様にご迷惑をお掛けしない様に外来に支障を来たす事無く、時間の合間を縫って鋭意参加する予定です。まだまだ勉強です!
自分自身にとりましては、本日をもって今年度の就学時検診は全て終了となりました。 今日の来年新1年生のお子さん達は大変上手に検診を受けてくれました! 保護者の方もご協力ありがとうございました。

またOCTのバージョンアップ情報(その2)の記事も鋭意制作中です。今週末まで学会がありますので、お待ちになられている方は今しばらくお時間を頂ければ幸いです。
OCTの経過観察機能が更に充実し、長期のOCT解析結果の経過が簡単に、しかも詳細に比較可能となりました!その中の一例だけを下記に表示させて頂きます。

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10月も終わり、今年もあと2ヶ月となりました。風邪が流行っているようですので気を付けましょう。インフルエンザも風邪も予防のためには「うがい」より何より「手洗い」が大事ですよ! 風邪は万病のもとです。寒暖差厳しい折、健康管理には気を配りましょう!

2013年10月31日

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緑内障学会と最新型OCTバージョンアップ!(その1)

みなみ野眼科クリニックのNIDEK社製では現段階で最高位機種である3次元光干渉断層計(RS-3000 Advance型)の更なるバージョンアップが完了しました!
早速スタッフ一同、新バージョンの検査結果表示、その打ち出しの勉強会です!

スタッフ勉強会

スタッフ勉強会

ところで、先日9月21日~23日まで東京にて開催された第24回日本緑内障学会に出席して来ましたが、今年は例年以上に収穫が得られた内容の濃い発表が多かった気が致します。緑内障診断、最新医療機器の使用法、最新の治療薬剤の選択法など、私自身も大変勉強になりました。

緑内障学会プログラム

緑内障学会プログラム
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その中でも、やはりOCTの普及が緑内障診断・治療に大きな影響をもたらした事を実感いたしました。 学会3日目の朝7時半からのモーニングセミナーでは当院採用のAdvance型OCTのバージョンアップ機能について1時間に渡り岡山大学、愛媛大学の先生の講演がありましたが、早朝にも拘わらず座る場所が無い程の大盛況ぶりでした! 少し鼻高々な気持ちで講演を聞いて参りました。 然しながらOCTはあくまでも機械である為、OCTに頼りすぎない事の重要性も話題になっていました。 「緑内障診断は医療機器に頼りすぎると思わぬ落とし穴がある」と数名の先生が研究発表の中で論じておりました。確かに自分自身も「その通り!」と思われる症例も多く経験しております。
あくまでも緑内障をはじめ、他の疾患の診断に関しては

①    眼科医が直接診る眼底検査結果
②    眼圧動態
③    視野検査結果
④    OCT等、画像結果

上記の全てを含めた上での診断が必要である事を再認識致しました。 「OCTを用いた測定で網膜の一部(網膜神経線維層)が薄くなってなければ緑内障ではない」とは言い切れないのです。眼科医が直接診た結果「網膜が厚くなる病気」が重なっていれば機械は間違った評価をしてしまいます。
話しが難しくなって来ましたのでこの辺で修正を・・・(^_^;)

 

さてOCTバージョンアップの内容です。更に多くの機能が加わりましたが、その中でも最大の変更点は従来は測定幅が縦横9㎜幅の設定が、横幅が12㎜まで広がった事です!

OCT解析結果

撮影幅変更後OCT解析結果の1例
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【改良前】

黄斑ライン(左)/旧OCT断面図(右)

黄斑ライン(左)/旧OCT断面図(右)
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[写真左]赤線:旧横の測定幅(黄斑ライン) 黄点:黄斑部
[写真右]旧黄斑ラインの断面図:中央の凹みは黄斑部

 

【改良後】

新黄斑ライン(写真左)/新OCT断面図(写真右)

新黄斑ライン(写真左)/新OCT断面図(写真右)
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[写真左]赤線:新横の測定幅 黄点:黄斑部
[写真右]新黄斑ラインの断面図:右端の凹みが視神経乳頭

 

測定可能の幅が横12㎜になった事で、視神経と網膜が完全に連続して診る事が出来る様になりました。
この事により
1) 画像を眼球断面図と照らし合わせて、今まで以上に患者様に判り易く検査結果の説明が可能になった
2) 緑内障に類似した他の視神経疾患との鑑別にも有用
3) より広範囲の眼底の情報が得られる事になります。

 

 

他にも追加機能、機能改良点は多々ありますが、その中でも「経過観察機能の強化(フォローアップ機能強化)」は我々医療従事者だけでなく、患者様にとりましても大変有意義な改良になったと思います。
当院にて何度かOCTを受けられた患者様に関しましては、以前の検査結果と比較した変化(差分)が「従来の経過観察機能」に比べ内容も充実した上、操作も簡単になった事により、数回の検査結果の変化が更に判り易くプリントアウトする事が可能となりました。患者様にも今まで以上に検査結果の推移が一目瞭然に、ご理解頂ける様になりました!
この点に関しましては他の改良点と共に近日、当HPにUP予定とさせて頂く予定です。お楽しみにして頂ければ幸いです。

 

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眼疾患と症状 第11回:運動会シーズン到来!注意すべき眼の外傷(危険はご家庭内にもあります!) 追加しました

眼疾患と症状 第11回:運動会シーズン到来!注意すべき眼の外傷(危険はご家庭内にもあります!)  追加しました

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第11回:運動会シーズン到来!注意すべき眼の外傷(危険はご家庭内にもあります!)

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総会出席と、網膜静脈閉塞症治療の最前線!!

先日9月11日(水)に南多摩眼科医会総会が行われました。総会の後には東京医科大学八王子医療センター眼科の志村雅彦教授の特別講演があり聴講してきました。

眼の血管が詰まってしまう病気(網膜静脈閉塞症)の「最先端治療について」や「今後の治療方針の展開」についてのご講演であり、とても興味深い内容でした。

この疾患は血栓によって網膜血管が詰まる事により、血管が破裂し眼底出血を引き起こす眼の脳梗塞のような病気です。眼底出血が網膜の中心部(黄斑部)に及びますと、視力低下や変視症(歪んで見える)等の症状が出ます。治療には内服療法、レーザー治療、薬剤の硝子体注射、硝子体手術療法等があります。

黄斑部のむくみ(黄斑浮腫)が酷くなりますと矯正視力が0.1以下になってしまう事もあります。この黄斑浮腫を如何に防ぐか、また黄斑浮腫が重度になった場合の治療法は大変難しい問題であり、志村先生はこの疾患の治療に積極的に取り組まれておられました。私にとりましても大変参考になる有意義なご講演でした。

Microsoft Word - Šá‹…’f–ʐ}OCT.docx

眼球断面図(OCT撮影部)
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Microsoft Word - BRVO‚ÌOCT‘œ.docx

BRVOのOCT像
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※網膜静脈閉塞症の眼底写真は当HPの「眼疾患と症状:第8回」に掲載しておりますので合わせて、ご覧ください。

この疾患は比較的ご年配の方に多く、脳梗塞と同様に動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・心臓弁膜症 等の基礎疾患をお持ちの方に多く発症する事が多い傾向にあります。

しかし上述のような持病の無い若い方にも発症します!

血管を縮めてしまう「過度のストレス」や「喫煙等」も原因になりえます。また膠原病(こうげんびょう)を持病としてお持ちの方が発症する事もあります。女性では経口避妊薬の内服が原因になる事もあるので注意が必要です!

若い方も油断禁物ですので、「遠くも近くも見えない」「歪んで見える」「暗い部分がある」等の症状がある際は眼科受診を致しましょう(了)。

追記:

総会・講演会に出席の為、9月11日(水)は診療時間を18時までとさせて頂きました。そのため、一部の患者様にはご迷惑をおかけ致し、大変申し訳ございませんでした。

今後は日本緑内障学会(東京)・日本臨床眼科学会(横浜)・日本神経眼科学会(秋田)に出席を予定しております。患者様にご迷惑をお掛けしないよう休診は避けながらも学会には鋭意参加し、最新の医療情報を吸収して、患者様の治療に貢献して参りたいと考えておりますので宜しくお願い申し上げます。

今回は外来を終え、一目散に会場に向かいましたのでカメラを携帯するのを忘れてしまいました。

当コラムでは恒例?となりました記念写真を撮る事が出来ませんでした。その点だけは、とても残念でした。

9月15日

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「眼科設備」と「当院にて可能な特殊治療・特殊検査」の項目をリニューアル致しました!

「眼科設備」と「当院にて可能な特殊治療・特殊検査」の項目に設備の追加と、設備の説明を追加させて頂きました。
説明内容も、より患者様に判り易いようにリニューアルさせて頂きましたので、お時間のあります際に、是非ご覧くださいませ。

「眼科設備について」

「当院にて可能な特殊治療・特殊検査」

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眼疾患と症状 第10回:他科の疾患と関連する眼疾患(その2:膠原病 ドライアイ~重大疾患まで)追加しました

眼疾患と症状 第10回:他科の疾患と関連する眼疾患(その2:膠原病 ドライアイ~重大疾患まで)追加しました

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第10回:他科の疾患と関連する眼疾患(その2:膠原病 ドライアイ~重大疾患まで)

眼科の外来に患者様が受診されました際に、問診において「膠原病(こうげんびょう)の治療をしている方」または「確定診断はついていないが膠原病を疑われ検査中の方」の多さには本当に驚いております。
そもそも、この膠原病とはどの様な病気なのか、また眼科的疾患との関連はどの様なものがあるのかを中心にお話し致したいと思います。

この項目は「眼疾患と症状」ですが、膠原病に関連する眼疾患の症状に関しましては最後に記載しております。少々長くなりますが膠原病も対岸の火事ではございません。なるべく判り易く、長文は控え、表を用い、箇条書きに致しましたので最後まで一読の程お願い申し上げます。

★膠原病とは:全身の複数の臓器に炎症が起こり、臓器の機能障害をもたらす一連の疾患群の総称

完全な病態の解明は、未だ成されていない。

★膠原病で起こりうる主な眼の病気(→以降は危険な合併症)

  • 乾性角結膜炎(ドライアイ)
  • 強膜炎、上強膜炎
  • ぶどう膜炎(虹彩炎・虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎・全眼球炎)→ 続発性緑内障
  • 網膜病変(眼底出血・網膜血管閉塞症)→ 続発性緑内障 新生血管緑内障 増殖性網膜症
  • 視神経症(虚血性視神経症・圧迫性視神経症 等)
  • 治療薬による影響:ステロイド長期内服・点滴の副作用→白内障・高眼圧症・緑内障

★膠原病、及び周辺疾患の種類★

このA・Bは、す~っと眼を通す感じで気楽にお願いします。次の赤字から熟読をお願い致します。

A.古典的膠原病

関節リウマチ
全身性エリテマトーデス (=SLE)
強皮症:シェーグレン症候群を合併
皮膚筋炎・多発性筋炎 :合併しやすい病気のうち特に注意しなくてはならないのは間質性肺炎と悪性腫瘍である。治療薬であるステロイドの長期内服の副作用が懸念される。
混合性結合組織病 :全身性エリテマトーデス、強皮症、多発筋炎の特性を合わせ持つ事が特徴の疾患

B.その他の膠原病・膠原病類縁疾患

  • シェーグレン症候群 
  • Wegener(ウェゲナー)肉芽腫症
  • アレルギー性肉芽腫性血管炎 (=チャーグ・ストラウス症候群)
  • ベーチェット病・側頭動脈炎・リウマチ性多発筋痛症

リウマチ性多発性筋痛症自体には眼科的合併症は少ないモノの、同疾患に側頭動脈炎の合併が診られないか否かが眼科的合併症の発症率を推測する上では重要。また治療薬(主にステロイド)による副作用に対する眼科的定期検査は必須である疾患である※

★膠原病関連疾患で眼科的に最も身近で有名なものは・・・シェーグレン症候群です。

シェーグレン症候群の特徴的な眼症状はドライアイ(乾燥性角結膜炎)と同様です。

症状:眼の乾燥感、異物感、まぶしい。これらの症状は、特に乾燥時やパソコン画面を長時間見た時、寝不足の際に起こりやすくなる。頻度は多く40~50歳の女性に多いと言われている。ドライアイ(乾燥性角結膜炎)の他にドライマウス(口の渇き)も伴う事が多い。

■その他、シェーグレン症候群の特徴■

①   本症候群は他に関節、筋肉、腎臓、甲状腺、神経、皮膚、肺などで様々な症状をきたす。

②   関節リウマチの方の15〜25%に合併。

③   全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病を合併していることが全体の1/3程度ある。

④   他の膠原病の方でシェーグレン症候群を合併している方は同症状が起こる

 

★それでは特に眼疾患と関連の深い膠原病関連疾患を表にしてみました★

【表:膠原病、及び関連疾患でみられる主な眼病変】

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特に表内※1~※5の疾患に関しましては下記に詳細記載いたします。

※1血管炎症候群

  • 血管炎の分類

1)大血管炎:大血管を選択的に傷害する: 大動脈炎症候群(高安動脈炎)、側頭動脈炎などがあげられる。

2)中血管炎・中小動脈を傷害するもの: 結節性多発動脈炎、川崎病、などがあげられる。

3)小血管炎と中血管炎を合併するもの:アレルギー性肉芽腫性血管炎 ウェゲナー肉芽腫症
関節リウマチ、SLE、ベーチェット病
によるものがあげられる。

4)小血管炎:細小動脈を傷害するものである。薬剤性血管炎、膠原病関連血管炎、悪性腫瘍関連血管炎(悪性リンパ腫、白血病、固形がん)、感染症関連、血管炎、サルコイドーシスなどがあげられる。

※2:側頭動脈炎:一過性黒内障、複視、視神経症(急な視力低下や視野欠損)、眼窩内血管雑音。
青字は下記に詳細を解説致しますが、側頭動脈炎に特有の疾患・症状ではありません★

1)一過性黒内障とは:
血管の内壁にできた血栓が剥がれて脳動脈に流れていき血管を詰まらせると脳虚血発作を引き起こす。このような血栓は一時的に詰まっても血栓が砕けたり、溶けて消失してしまうために血流が再開する為、症状も一過性で済む。「一過性脳虚血発作」或いは「一過性黒内障」と呼ばれる。糖尿病、高脂血症と、高血圧症いった生活習慣病や、動脈硬化による頚動脈の狭小化(首の動脈が細くなる)によって、一過性黒内障も増加しています。一過性黒内障は、片目が見えなくなるという症状が主です。
その為に患者様は最初に眼科を受診することが多いのですが、受診時には元に戻っている事があります。眼科検査をしても、有意な異常所見が得られない事も多々あります。然しながら症状が無くなったからと言って安心ではなく、再発の危険性もありますし、脳梗塞や心筋梗塞は勿論、網膜血管や視神経への血管への血流途絶の前触れの可能性もある為、内科(特に)神経内科等で採血・心電図・画像診断(CT・MRI・頸動脈ドップラー検査)が必要と考えます。その場合には経過を記載し神経内科医に紹介させて頂いています。

2)複視とは:両方の眼で見るとモノが二つに見える:
片目でみると一つに見えるが両眼で見ると二つに見える
→ 眼球運動障害や眼の位置のズレ(斜視、上下斜視、斜偏位等)を考える。
程度に応じては緊急の頭蓋内画像診断が必要

3)視神経症とは:(虚血性視神経症や炎症性視神症=視神経炎)
視神経の急激な虚血のため片眼、時には両眼の急激な視力低下や視野欠損(中心暗点や、上下のいずれか半分が見えなくなる水平半盲)等が主症状。炎症性では眼球運動痛(眼球を動かすときの目の痛み)や目の圧迫感などを伴う事もあります。視神経症の原因を探るために、視力検査・眼底検査・視野検査(主にゴールドマン視野)のほか、画像診断(CT・MRI・超音波)検査・血液検査などが必要に応じて行われます。

★その他:重大な合併症を引き起こす可能性のある疾患★

※3:ベーチェット病:

15〜40歳の男性に好発し、青壮年期における失明の原因疾患として恐れられています。
ぶどう膜炎の型として、前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)、後部ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)、更に進行した全ぶどう膜炎に分類されます。90%以上のケースで両眼ともに症状が現れますが左右差のある場合もあります。治療に反応が悪い場合には続発性緑内障、新生血管緑内障、視神経萎縮等を起こし失明する場合も少なくはありません。ベーチェット病の確定診断のついた方、又はベーチェット病の疑いの強い方にはステロイド剤の全身投与は慎重に行わなければ、治療による経過は返って悪い結果になる場合が多い為、注意が必要です。

『ベーチェット病の眼以外の症状』
・主症状:皮膚科的所見は男女ともに9割程度の患者さんにみられ、結節性紅斑や皮下の血栓性静脈炎、毛嚢炎様皮疹等。その他、頻発する口内炎(口腔内アフタ)、陰部潰瘍等も認められます。
金属アレルギーの方も要注意です!。
・副症状:副睾丸炎・関節炎・血管病変・消化器病変・中枢神経病変等

 

※4:ウェゲナー肉芽腫:

血管炎の1つで、鼻腔、上気道、肺などの下気道等に、血管の炎症により血管が腫れたり詰まったりし、また、炎症をおこした細胞やその破片によって肉芽腫(腫瘤の様なモノ)ができる病気です。

 ★この疾患の主な眼所見や合併症は「眼窩内腫瘤による眼球突出」「充血」「視神経症(圧迫性虚血性)」です★

 

※5:アレルギー性肉芽腫性血管炎:

目の症状は少ない。結膜の肉芽腫、前部ぶどう膜炎、眼窩炎症、網膜血管閉塞症(網膜静脈閉塞ないし動脈閉塞)の報告がある。

★膠原病の眼科的合併症の症状(重要!)★

1)ぶどう膜炎の症状

  • 前部ぶどう膜炎(虹彩毛様体炎)では、充血、眼痛、流涙、羞明、視力障害

  • 後部ぶどう膜炎=(硝子体炎・網脈絡膜炎)では視力障害、飛蚊症、視野欠損 等

2)強膜炎の症状

  • 結膜充血・痛み(鈍痛)・白目の充血部盛り上がり・再初を繰り返すと強膜が薄くなり「ブドウの巨砲」の様な紫色を呈してくる(強膜の非薄化により脈絡膜=ブドウ膜が透けて見える様になる)。白目は結膜の色ではなく強膜の色です。結膜は強膜を覆う透明な膜なのです。

3)網膜血管閉塞症(動静脈閉塞症)の症状

この疾患に関しましては「眼疾患と症状8回 ストレスが原因となる眼疾患:その2」の虚血性眼疾患の項に数例の眼底写真を掲載しておりますのでご参照くださいませ。

・急激な視力低下・視野欠損・歪んで見える・暗く見える部分がある等

4)視神経症(虚血性・圧迫性)の症状

・急激な視力低下・視野欠損(中心暗点、水平半盲 等)・暗く見える部分がある

5)ドライアイ=乾燥性角結膜炎の症状(詳細は上述)

またまた長くなってしまいましたが、ご自身の体を守るのはご自身です。膠原病等という、そもそも原因の判っていない病気にこれだけの眼疾患や症状が関連している事だけでも頭の片隅において頂ければ幸いです。

「眼の病気と思っていたのが実は膠原病が原因だった」といち早く診断を付ける為にも、患者様の眼以外の症状、また「病歴聴取」が如何に大事であるかもお判り頂けたかと思います。「関係ないかな?」と思われましても、眼の症状以外の体の異常、過去に疑われた病気のお話をお聞かせ頂ければ、当方の診断の一助になりますのでお話しいただければ幸いです。一緒に病気の原因追求を致しましょう。

追記:本稿の一部に記載されました川崎病、悪性腫瘍関連血管炎(悪性リンパ腫、白血病、固形がん)やサルコイドーシスと眼疾患の関係につきましては、別稿で紹介予定とさせて頂きます。

文責:藤田

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